アイヌ魚辞典
アイヌ魚辞典 サケ、ニシン、カジカ、貝、昆布 39種
アイヌの人々にとっていちばん大切な魚はサケで、カムイチェㇷ゚(神の魚)と呼びました。川ではサケとマス、海では季節ごとにイワシ、ニシン、カレイ、ホッケ、タラ、カジカ。磯では貝と海藻。沖へは出ず、沿岸であらゆる魚を適度にとる「間引き」の漁でした。

サケは捨てるところがありませんでした
サケは秋に川をのぼり、産卵します。卵は約2か月でかえって海へ行き、2〜8年回遊して戻ってきます。だから旬は秋から初冬です。季節外れにとれたものをトキシラズ、産卵後のものをホッチャレと呼びます。
身のほか、すじこ(チポㇿ)、白子、めふん(腎臓)、氷頭(頭の軟骨)、えら、ひれ、皮まで使い、余すところがありません。十勝の資料は、すじこを調味料のように使い、皮は靴にしたと書いています。たたき(チタタㇷ゚)は頭の軟骨とえらと中骨とひれを細かくたたき、白子を加えます。目玉はつぶさないようにくり抜き、たたきには入れずそのまま食べました。
とれ始めのサケは脂が乗っていて保存に向かないので、10〜11月に脂が抜けてから干し魚を作ります。この時期は1日の多くが干し魚の加工にかかったと本に書かれています。マスは夏の大切な食料ですが、脂が多く越冬用にはなりませんでした。
出典: 『アイヌのごはん 自然の恵み』魚と陸獣図鑑・たたき、帯広開発建設部『時をこえて十勝の川を旅しよう!』p.122〜125
魚・貝・海藻・海の獣の一覧
名前、アイヌ語、時期、部位、料理の言葉で探せます。
川の魚
- カムイチェㇷ゚(シペ)kamuycep / sipeサケ(シロザケ) Oncorhynchus keta
- とれる時期
- 秋から初冬。9月ごろから川をのぼる。保存用の干し魚は、脂が抜ける10〜11月に作る。季節外れのものはトキシラズ、産卵後はホッチャレ
- 使う部分
- 身、すじこ(チポㇿ)、白子、めふん(腎臓)、氷頭(頭の軟骨)、えら、ひれ、皮まで使い切る。目玉はくり抜いてそのまま食べ、たたきには入れない
- 下ごしらえ
- 汁は食べやすく切って野菜のあとに入れる。たたきは頭・えら・中骨・ひれを細かくたたき、白子を加える。すじこは塩水の中でほぐすか、箸や金網でばらし、半煮えにして生ぐささを取る
- 保存
- 開いて干し、家の中につるして煙でいぶす(とば・サッチェㇷ゚)。冬は凍らせる(ルイペ)。十勝では、とったサケのほとんどを冬のためにとっておいた
- 使い方
- さけ汁(チェㇷ゚オハウ)、たたき(チタタㇷ゚)、ルイペ、焼き鮭(チマチェㇷ゚)、混ぜご飯、すじこ粥、すじこの混ぜご飯、じゃがいもとすじこのつぶし和え(チポㇿウㇱイモ)、白子の団子、白子汁
- 注意
- 生で食べるときはアニサキスなどの寄生虫に注意が要ります。確実な予防は−20℃で24時間以上の冷凍か、加熱です。家庭の冷凍庫は−20℃に届かないことがあるので、生食には冷凍済みの刺身用を使います
- 地域
- 北海道の各地。十勝ではカムイチェㇷ゚(カムイの魚)と呼び、幕別の安東ウメ子さんが紹介していた鮭の料理が国の冊子に残っています
この材料の料理 チェㇷ゚オハウ(さけ汁)(サケと根菜の塩味の汁)、チポㇿサヨ(すじこ粥)(炊きあがった粥にすじこを散らす)、すじこの混ぜご飯(ばらしたすじこを炊きあがりに混ぜる)、サケの混ぜご飯(焼いてほぐしたサケを混ぜる)、白子の団子(サケの白子をたたいて片栗粉とニラで焼く)、チポㇿシト(焼いたいも団子につぶしたイクラをまぶす)、チマチェㇷ゚(アマチェㇷ゚・鮭の串焼き)(サケの切り身を串に刺して炉の火で焼く)、チポㇿウㇱイモ(ジャガイモとすじこのつぶし和え)(ゆでてつぶしたジャガイモに、半煮えにしたすじこを合わせる)、ルイペ(ルイベ)(凍らせたサケを凍ったまま薄く切る)、チタタㇷ゚(たたき)の考え方(新しい魚を丸ごとたたく。たたくのは男の仕事)、サケのチタタㇷ゚(さけのたたき)(頭・えら・中骨・ひれをたたき、白子と焼いた昆布を加える)、チタタㇷ゚入りオハウ(たたいたサケを団子にして昆布だしの汁に)、保存食の考え方(干し魚・干し肉・とば・干し山菜)(1年の半分が雪の北海道で、越冬の食料は保存食だった)、サッチェㇷ゚(アタッ・干し鮭・とば)(サケを開いて干した保存食)
出典: 『アイヌのごはん』魚と陸獣図鑑・汁物・たたき、帯広開発建設部『時をこえて十勝の川を旅しよう!』p.122〜125、厚生労働省「アニサキスによる食中毒を予防しましょう」 - サキペsakipeマス(カラフトマス ヘモイ・サクラマス イチャニウ・ヒメマス カパッチェㇷ゚) Oncorhynchus gorbuscha ほか
- とれる時期
- 初夏から。カラフトマスは7月から川をのぼり8〜10月に産卵。サケがのぼるまでの夏の大切な食料
- 使う部分
- 丸ごと、切り身
- 下ごしらえ
- うろこと内臓を取り、口から尾へ串を打って遠火で焼く。切り身は水気をふいて串を打つ
- 保存
- 脂が多いので、越冬用の干し魚には向かない
- 使い方
- 焼き魚、チタタㇷ゚
- 注意
- 生食は冷凍済みのものを。サクラマスやカラフトマスの生食では日本海裂頭条虫にも注意が要ります
- 地域
- 北海道の各地
この材料の料理 焼き魚(マス・タナゴ・スナガレイ・ニシン・カワガレイ・カナガシラ・ソイ・イワシ・ワカサギ・シシャモ・ナメタガレイ)(うろこと内臓を取り、串を打って遠火で焼く)
出典: 『アイヌのごはん』魚と陸獣図鑑・焼き物、食品安全委員会 文献調査報告 26. 裂頭条虫 - スサㇺsusamシシャモ Spirinchus lanceolatus
- とれる時期
- 晩秋に川をのぼって産卵。漁は10〜11月の約1か月
- 使う部分
- 丸ごと
- 下ごしらえ
- 腹側から背側へ串を2本打ち、6尾ほど束ねて遠火で焼く
- 保存
- 丸干し
- 使い方
- 焼き魚、焼いたシシャモの汁(白糠)、釧路川ではシシャモのルイペの絵が残る。むかわ町の町魚。輸入のカラフトシシャモは別の魚
- 地域
- 北海道の太平洋岸、鵡川から釧路までの16の川だけにのぼる
この材料の料理 シシャモのオハウ(焼いたシシャモと根菜の昆布だしの汁)、焼き魚(マス・タナゴ・スナガレイ・ニシン・カワガレイ・カナガシラ・ソイ・イワシ・ワカサギ・シシャモ・ナメタガレイ)(うろこと内臓を取り、串を打って遠火で焼く)、ルイペ(ルイベ)(凍らせたサケを凍ったまま薄く切る)
出典: 『アイヌのごはん』魚と陸獣図鑑・焼き物、アイヌ民族文化財団「海の幸の料理 白糠地方」p.50〜53 - チマカニcimakaniカジカ Cottidae
- とれる時期
- 冬が旬
- 使う部分
- 丸ごと。頭、胸、腹、尾、内臓、大きな肝。昔は家族で食べる部位が決まっていた(頭は長老と客、胸は長老の妻、腹は息子、尾と内臓は息子の嫁)
- 下ごしらえ
- こすり洗いして頭を落とし、内臓を部位ごとに分け、汚れをしごき出して水につけ血を抜く。胴は三等分にぶつ切り
- 使い方
- かじか汁(よいだしが出る)、そぼろ、胃袋に肝を詰めて煮る一品、チタタㇷ゚
- 注意
- 胃袋は裏返して包丁でしごき、寄生虫と汚れを取ると本に書かれています
- 地域
- 北海道の各地
この材料の料理 カジカ汁(カジカを丸ごと使う汁)、タラのそぼろ・カジカのそぼろ(ゆでてほぐした魚を弱火で炒る)、カジカの胃袋肝詰め(胃袋に肝と塩を詰めて昆布と煮る)
出典: 『アイヌのごはん』魚と陸獣図鑑・汁物・一品料理 - ウグイウグイ Tribolodon hakonensis
- 使う部分
- 身と卵
- 使い方
- チタタㇷ゚、卵をサラダ風のラタㇱケㇷ゚に
この材料の料理 チタタㇷ゚(たたき)の考え方(新しい魚を丸ごとたたく。たたくのは男の仕事)
出典: 『アイヌのごはん』「アイヌ料理」とは何か - ヤマベヤマベ(ヤマメ) Oncorhynchus masou
- 使い方
- 粥に入れる(農政事務所の冊子「ヤマメのサヨ」)
この材料の料理 川と海でとる魚の一年(間引きの漁)(沿岸であらゆる魚を適度にとる)
出典: 北海道農政事務所『受け継ぎたい北海道の食 vol.3』p.17 - イトウイトウ Parahucho perryi
- 使い方
- 川魚としてとった魚のひとつ(本に大きな個体の写真)
この材料の料理 川と海でとる魚の一年(間引きの漁)(沿岸であらゆる魚を適度にとる)
出典: 『アイヌのごはん』「アイヌ料理」とは何か - ワカサギワカサギ Hypomesus nipponensis
- 使う部分
- 丸ごと
- 下ごしらえ
- 串を2本打って6尾ずつ束ね、遠火で焼く
- 使い方
- 焼き魚
この材料の料理 焼き魚(マス・タナゴ・スナガレイ・ニシン・カワガレイ・カナガシラ・ソイ・イワシ・ワカサギ・シシャモ・ナメタガレイ)(うろこと内臓を取り、串を打って遠火で焼く)
出典: 『アイヌのごはん』焼き物
海の魚
- ニシポㇰnisipokホッケ Pleurogrammus azabi
- とれる時期
- 初夏から冬。旬は7月
- 保存
- 干物(道外に出るのは主にシマホッケ)
- 使い方
- 北海道を代表する味。焼き魚、煮魚
- 地域
- 北海道の近海
この材料の料理 川と海でとる魚の一年(間引きの漁)(沿岸であらゆる魚を適度にとる)
出典: 『アイヌのごはん』魚と陸獣図鑑 - サマンペ(カパリウ)samanpeカレイ(マガレイ・スナガレイ・カワガレイ・ナメタガレイ) Pleuronectidae
- とれる時期
- 秋から春
- 使う部分
- 丸ごと。卵はサラダ風のラタㇱケㇷ゚にも
- 下ごしらえ
- うろこ・頭・内臓を取り、頭側から尾へ串を打って遠火で焼く。塩煮は昆布と長ねぎの湯に入れ、落としぶたで10〜15分
- 保存
- 干物に向く種類もある
- 使い方
- 焼き魚、塩煮(ゴボウ・フキ・タケノコ・シイタケを添える)、冬は刺身
- 地域
- 北海道の近海(14種)
この材料の料理 魚の塩煮(マガレイ・カナガシラ・イワシ・スナガレイ・タナゴ・ソイ)(昆布と長ねぎの湯で魚を煮て、野菜の煮物を添える)、焼き魚(マス・タナゴ・スナガレイ・ニシン・カワガレイ・カナガシラ・ソイ・イワシ・ワカサギ・シシャモ・ナメタガレイ)(うろこと内臓を取り、串を打って遠火で焼く)
出典: 『アイヌのごはん』魚と陸獣図鑑・焼き物・煮物 - ニシンニシン Clupea pallasii
- とれる時期
- 春
- 使う部分
- 身、白子、頭、中骨、あご、えら。子持ちは腹を裂かずに焼く
- 下ごしらえ
- うろこを落とし頭と内臓を取る。汁は5mm間隔に切り目を入れてぶつ切り。たたきは頭・中骨・あご・えらを細かくたたく
- 保存
- 麹と塩で漬ける(切り込み)、酢と油に漬ける(酢漬け)。脂も取った
- 使い方
- にしん汁、白子汁、白子とフキノトウの汁、たたき、切り込み、酢漬け(イチイの葉と山椒)、焼き魚
- 注意
- 生で食べる品は寄生虫の注意が要ります
- 地域
- 北海道の各地
この材料の料理 ニシン汁(切り目を入れたニシンと根菜の汁)、ニシンの白子汁(血抜きした白子とフノリの汁。フキノトウを散らす形も)、焼き魚(マス・タナゴ・スナガレイ・ニシン・カワガレイ・カナガシラ・ソイ・イワシ・ワカサギ・シシャモ・ナメタガレイ)(うろこと内臓を取り、串を打って遠火で焼く)、ニシンのチタタㇷ゚(頭・中骨・あご・えらをたたき、ギョウジャニンニクと塩)、ニシンの切り込み(3枚におろしたニシンを麹と塩で1週間)、ニシンの酢漬け(イチイの葉と山椒で香りをつけた酢と油に一晩)
出典: 『アイヌのごはん』汁物・たたき・一品料理・焼き物 - イワシイワシ Sardinops melanostictus
- とれる時期
- 春
- 使う部分
- 丸ごと。頭・中骨・尾びれもたたいて使う
- 下ごしらえ
- 3枚におろし、頭と骨をたたいてから身を加えてたたき、片栗粉でまとめる
- 保存
- 脂も取った
- 使い方
- つみれ団子(焼く)、つみれ汁、焼き魚、塩煮
この材料の料理 イワシつみれ汁(骨ごとたたいたイワシの団子を落とした汁)、イワシつみれ団子(骨ごとたたいたイワシを焼いた団子)、魚の塩煮(マガレイ・カナガシラ・イワシ・スナガレイ・タナゴ・ソイ)(昆布と長ねぎの湯で魚を煮て、野菜の煮物を添える)、焼き魚(マス・タナゴ・スナガレイ・ニシン・カワガレイ・カナガシラ・ソイ・イワシ・ワカサギ・シシャモ・ナメタガレイ)(うろこと内臓を取り、串を打って遠火で焼く)
出典: 『アイヌのごはん』団子・汁物・焼き物・煮物 - タラ・スケトウダラタラ・スケトウダラ Gadus macrocephalus / Gadus chalcogrammus
- とれる時期
- 冬
- 使う部分
- 身、肝(脂を取る)、卵
- 下ごしらえ
- ゆでてほぐし、弱火で炒る(そぼろ)。干しタラは水で戻して切る
- 保存
- 干す
- 使い方
- そぼろ、干しタラと昆布の煮物、チタタㇷ゚、卵をラタㇱケㇷ゚に。白老と浦河では肝から取った脂(タラスㇺ)を味つけに使う
- 地域
- 北海道の各地(白老・浦河の資料に肝の脂)
この材料の料理 スケトウダラと昆布の煮物(干しタラを戻して昆布と煮る)、チタタㇷ゚(たたき)の考え方(新しい魚を丸ごとたたく。たたくのは男の仕事)、タラのそぼろ・カジカのそぼろ(ゆでてほぐした魚を弱火で炒る)、脂の取り方(魚・陸獣・海獣)(汁の甘みと満腹感のための脂)
出典: 『アイヌのごはん』一品料理・煮物、アイヌ民族文化財団「海の幸の料理 浦河地方」p.9〜15 - キンキ(赤魚)キンキ(キチジ) Sebastolobus macrochir
- とれる時期
- 冬
- 使う部分
- 骨、身、白子
- 下ごしらえ
- 骨からたたき始め、身を加え、最後に白子を加えてたたく
- 使い方
- チタタㇷ゚(浦河の資料もキンキで作る)
- 注意
- 生食の寄生虫の注意
- 地域
- 北海道(浦河の資料)
この材料の料理 チタタㇷ゚(たたき)の考え方(新しい魚を丸ごとたたく。たたくのは男の仕事)
出典: 『アイヌのごはん』「アイヌ料理」とは何か、アイヌ民族文化財団「海の幸の料理 浦河地方」p.60〜67 - ソイソイ Sebastes spp.
- 使う部分
- 丸ごと
- 下ごしらえ
- うろこと内臓を取り、口から尾へ串
- 使い方
- 焼き魚、塩煮(ギョウジャニンニクとムキタケを添える)
この材料の料理 魚の塩煮(マガレイ・カナガシラ・イワシ・スナガレイ・タナゴ・ソイ)(昆布と長ねぎの湯で魚を煮て、野菜の煮物を添える)、焼き魚(マス・タナゴ・スナガレイ・ニシン・カワガレイ・カナガシラ・ソイ・イワシ・ワカサギ・シシャモ・ナメタガレイ)(うろこと内臓を取り、串を打って遠火で焼く)
出典: 『アイヌのごはん』焼き物・煮物 - カナガシラカナガシラ Lepidotrigla microptera
- 使う部分
- 丸ごと
- 下ごしらえ
- うろこ・頭・内臓を取って串を打つ
- 使い方
- 焼き魚、塩煮(オニシモツケを添える)
この材料の料理 魚の塩煮(マガレイ・カナガシラ・イワシ・スナガレイ・タナゴ・ソイ)(昆布と長ねぎの湯で魚を煮て、野菜の煮物を添える)、焼き魚(マス・タナゴ・スナガレイ・ニシン・カワガレイ・カナガシラ・ソイ・イワシ・ワカサギ・シシャモ・ナメタガレイ)(うろこと内臓を取り、串を打って遠火で焼く)
出典: 『アイヌのごはん』焼き物・煮物 - タナゴ(ウミタナゴ)タナゴ Ditrema temminckii
- 使う部分
- 丸ごと
- 下ごしらえ
- 洗って水気をふき、口から尾へ串
- 使い方
- 焼き魚、塩煮(オニシモツケとシイタケを添える)
この材料の料理 魚の塩煮(マガレイ・カナガシラ・イワシ・スナガレイ・タナゴ・ソイ)(昆布と長ねぎの湯で魚を煮て、野菜の煮物を添える)、焼き魚(マス・タナゴ・スナガレイ・ニシン・カワガレイ・カナガシラ・ソイ・イワシ・ワカサギ・シシャモ・ナメタガレイ)(うろこと内臓を取り、串を打って遠火で焼く)
出典: 『アイヌのごはん』焼き物・煮物 - カジキカジキ Xiphiidae / Istiophoridae
- とれる時期
- 初夏
- 使う部分
- 頭からひれ、尾まで使う。頭はチタタㇷ゚に
- 使い方
- 儀式で調理される魚のひとつ。頭のチタタㇷ゚
この材料の料理 川と海でとる魚の一年(間引きの漁)(沿岸であらゆる魚を適度にとる)
出典: 『アイヌのごはん』「アイヌ料理」とは何か - サメサメ
- とれる時期
- 初夏
- 使う部分
- 肝(煎って脂を取る)
- 使い方
- 汁に入れる脂の材料
この材料の料理 脂の取り方(魚・陸獣・海獣)(汁の甘みと満腹感のための脂)
出典: 『アイヌのごはん』「アイヌ料理」とは何か - 季節の海の魚マンボウ・スズキ・サンマ・ハタハタ
- とれる時期
- 初夏にマンボウ、夏にスズキ、秋にサンマとハタハタ
- 使い方
- 沿岸であらゆる種類の魚を、全部ではなく適度にとる「間引き」の漁だったと本に書かれています
この材料の料理 川と海でとる魚の一年(間引きの漁)(沿岸であらゆる魚を適度にとる)
出典: 『アイヌのごはん』「アイヌ料理」とは何か
貝・タコ・ホヤ
- ホッキホッキ(ウバガイ) Pseudocardium sachalinense
- 使う部分
- 身、貝柱、ひも。ウロは手で押し出し、水管のふちの黒い膜を取る
- 下ごしらえ
- 軽くゆでて赤く変わったら上げ、2枚に開いて切る
- 使い方
- 酢味噌和え、ゆでたギョウジャニンニクと和える(白糠)
- 地域
- 北海道の各地(白糠の資料)
この材料の料理 ホッキの酢味噌和え(軽くゆでたホッキを味噌と酢で和える)
出典: 『アイヌのごはん』和えもの、アイヌ民族文化財団「海の幸の料理 白糠地方」p.34〜40 - アワビエゾアワビ Haliotis discus hannai
- 使う部分
- 身。ウロと硬い口を除く
- 下ごしらえ
- 水から中火にかけ、煮立ったら弱火で1分。水に取って殻を外す
- 使い方
- 煮物(殻を器にする)
この材料の料理 マツブの煮物・アワビの煮物(殻ごと水から煮る貝)
出典: 『アイヌのごはん』煮物 - マツブマツブ(エゾボラ) Neptunea polycostata
- 使う部分
- 身。先のウロは切り離し、膜の内側のアブラ(唾液腺)を取り除く
- 下ごしらえ
- 水から中火、煮立ったら弱火で10分。串で回しながら殻から出す
- 使い方
- 煮物
- 注意
- 唾液腺(アブラ)は取り除きます
この材料の料理 マツブの煮物・アワビの煮物(殻ごと水から煮る貝)
出典: 『アイヌのごはん』煮物 - ホタテホタテ Mizuhopecten yessoensis
- 使う部分
- 身
- 下ごしらえ
- 沸いた湯で軽く火を通して切り、ゆで汁の上澄みで米を炊く
- 使い方
- 混ぜご飯
この材料の料理 ホタテの混ぜご飯(ホタテのゆで汁で炊き、身を混ぜる)
出典: 『アイヌのごはん』ご飯 - アサリアサリ Ruditapes philippinarum
- 使う部分
- 殻つき
- 下ごしらえ
- 3%の塩水に2時間つけて砂を出す
- 使い方
- 粥(殻が開いたらギョウジャニンニクを散らす)
この材料の料理 アサリ粥(砂出ししたアサリを殻ごと入れる粥)
出典: 『アイヌのごはん』お粥 - エゾイガイエゾイガイ Mytilus coruscus 近縁
- 使う部分
- 身
- 下ごしらえ
- 軽く湯がいて殻から外し切る
- 使い方
- 粥。ムール貝の名で売られていることもある
- 地域
- 北海道・東北
この材料の料理 エゾイガイ粥(湯がいた貝の身を粥に入れる)
出典: 『アイヌのごはん』お粥 - エゾホヤ(アカホヤ)エゾホヤ Halocynthia aurantium
- 使う部分
- 身。茶色のウロと2つの突起を除く
- 下ごしらえ
- 殻を2つに割って身を出し、1cm幅に切る
- 保存
- 塩と麹で塩辛にして冷蔵
- 使い方
- 塩辛、酢をかけて食べる
- 地域
- 北海道(表面がなめらかな種。宮城のマホヤとは別)
この材料の料理 ホヤの塩辛(エゾホヤを塩と麹で漬ける)
出典: 『アイヌのごはん』一品料理 - タコタコ(ミズダコ) Enteroctopus dofleini
- とれる時期
- 夏
- 使う部分
- 足(頭でもよい)
- 下ごしらえ
- ゆでたこを食べる人に合わせて切る
- 使い方
- ギョウジャニンニクとの塩酢和え、昆布とキュウリの和えもの、酢味噌和え(白糠)
- 地域
- 北海道(白糠の資料にもある)
この材料の料理 タコとギョウジャニンニクの塩酢和え(ゆでだこと、さっとゆでたギョウジャニンニクを酢と塩で)、タコと昆布、キュウリの和えもの(身の薄い昆布をゆでてタコと野菜を酢と塩で)
出典: 『アイヌのごはん』和えもの、アイヌ民族文化財団「海の幸の料理 白糠地方」p.41〜44 - エビエビ
- 使い方
- チタタㇷ゚にもできる魚介のひとつ
この材料の料理 川と海でとる魚の一年(間引きの漁)(沿岸であらゆる魚を適度にとる)
出典: 『アイヌのごはん』「アイヌ料理」とは何か - イカイカ
- とれる時期
- 夏
- 使い方
- 夏の海でとった魚介のひとつ
この材料の料理 川と海でとる魚の一年(間引きの漁)(沿岸であらゆる魚を適度にとる)
出典: 『アイヌのごはん』「アイヌ料理」とは何か
海藻
- コンプ(身の薄い昆布)konpu昆布(ホソメコンブ・早煮昆布) Saccharina spp.
- 使う部分
- 身の薄いもの。身の厚いだし昆布は使わない
- 下ごしらえ
- 水から入れ、やわらかくなったら取り出して細切りにし、鍋に戻して具として食べる。たたきには火であぶって砕く。団子のたれには焼くか素揚げして粉にする
- 保存
- 干す。浜に落ちた切れ端も拾った
- 使い方
- ほとんどの汁のだしと具、こんぶ汁、昆布団子のたれ、タコとの和えもの、干しタラとの煮物
- 地域
- 北海道の各地
この材料の料理 オハウ(汁物)の考え方(具のたっぷり入った汁。昔の主食)、チェㇷ゚オハウ(さけ汁)(サケと根菜の塩味の汁)、ニシン汁(切り目を入れたニシンと根菜の汁)、ニシンの白子汁(血抜きした白子とフノリの汁。フキノトウを散らす形も)、カジカ汁(カジカを丸ごと使う汁)、ユㇰオハウ(エゾシカ肉汁)(薄切りの鹿肉と根菜、きのこ、ワラビの汁)、コンブ汁(身の薄い昆布と根菜の味噌仕立ての汁)、イワシつみれ汁(骨ごとたたいたイワシの団子を落とした汁)、鳥のつみれ汁(小鳥を骨ごとたたいたつみれの汁)、キナオハウ(キナルル)(干したマイタケと干した山菜の汁)、シシャモのオハウ(焼いたシシャモと根菜の昆布だしの汁)、コンブシト(昆布団子)(粉にした昆布のたれをからめた団子)、チスイェㇷ゚(煮物)の考え方(水と昆布で煮て最後に塩。火を止めてしばらく置いて味を含ませる)、魚の塩煮(マガレイ・カナガシラ・イワシ・スナガレイ・タナゴ・ソイ)(昆布と長ねぎの湯で魚を煮て、野菜の煮物を添える)、ゴボウの塩煮(皮をこそげたゴボウを昆布と煮る)、シイタケの塩煮・ササノコの塩煮(きのこと若竹を昆布と煮る)、カシラコンブの塩煮・フキの塩煮・ギョウジャニンニクの塩煮(昆布の根元、フキ、ギョウジャニンニクを水と昆布で煮る)、スケトウダラと昆布の煮物(干しタラを戻して昆布と煮る)、タコと昆布、キュウリの和えもの(身の薄い昆布をゆでてタコと野菜を酢と塩で)、サケのチタタㇷ゚(さけのたたき)(頭・えら・中骨・ひれをたたき、白子と焼いた昆布を加える)、チタタㇷ゚入りオハウ(たたいたサケを団子にして昆布だしの汁に)、タラのそぼろ・カジカのそぼろ(ゆでてほぐした魚を弱火で炒る)、カジカの胃袋肝詰め(胃袋に肝と塩を詰めて昆布と煮る)
出典: 『アイヌのごはん』汁物・団子・和えもの・「アイヌ料理」とは何か - カシラコンブカシラコンブ(昆布の根元の部分)
- 使う部分
- 根元
- 下ごしらえ
- 水で煮て、やわらかくなったら塩
- 使い方
- 塩煮
この材料の料理 カシラコンブの塩煮・フキの塩煮・ギョウジャニンニクの塩煮(昆布の根元、フキ、ギョウジャニンニクを水と昆布で煮る)
出典: 『アイヌのごはん』煮物 - ポンコンブponkonpuポンコンブ(昆布とは別の海藻)
- 下ごしらえ
- 湯通しして水気を切る
- 使い方
- タマネギとの酢の物
この材料の料理 ポンコンブとタマネギの酢の物(湯通しした海藻と薄切りタマネギを酢で)
出典: 『アイヌのごはん』一品料理 - オプシプシ(アナメ)opsipusiスジメ(穴のあいた昆布) Costaria costata
- とれる時期
- 4月末
- 下ごしらえ
- 漁師は採らず、地元の人が海岸で拾って洗う
- 使い方
- 汁の具。一般にアナメと呼ばれる昆布とは別の種類なので注意と本に書かれています
- 地域
- 静内と噴火湾の沿岸
この材料の料理 川と海でとる魚の一年(間引きの漁)(沿岸であらゆる魚を適度にとる)
出典: 『アイヌのごはん』「アイヌ料理」とは何か - フノリフノリ Gloiopeltis spp.
- 使い方
- ニシンの白子汁、粥
この材料の料理 ニシンの白子汁(血抜きした白子とフノリの汁。フキノトウを散らす形も)、フノリ粥(フノリとギョウジャニンニクの粥)
出典: 『アイヌのごはん』汁物・お粥 - ギンナンソウギンナンソウ(干し) Mazzaella japonica
- 下ごしらえ
- 水で戻す。鍋に散らして、赤から緑に色が変わったらすぐ火を止め、余熱でやわらかくする
- 保存
- 干す
- 使い方
- 味噌仕立ての汁
この材料の料理 ギンナンソウ汁(干したギンナンソウの味噌汁)
出典: 『アイヌのごはん』汁物 - メカブメカブ Undaria pinnatifida(根元)
- とれる時期
- 春
- 使い方
- イタドリのたたきと一緒にたたく
この材料の料理 イタドリのおひたしとたたき(若い茎をゆでて皮をむき、刻むかたたく)
出典: 『アイヌのごはん』おひたし
海の獣
- フンペhumpeクジラ
- 使う部分
- 肉、脂
- 下ごしらえ
- 切って強火で炒め、ギョウジャニンニクを加える
- 使い方
- 油炒め、汁の脂。白糠の資料ではクジラのルイペ
- 地域
- 北海道の各地(白糠の資料)
この材料の料理 肉の油炒め(エゾシカの心臓とニリンソウ・クジラとギョウジャニンニク・エゾシカの横隔膜とアサツキ)(強火で肉を炒め、山菜を加えて塩)、ルイペ(ルイベ)(凍らせたサケを凍ったまま薄く切る)、脂の取り方(魚・陸獣・海獣)(汁の甘みと満腹感のための脂)
出典: 『アイヌのごはん』炒め物・「アイヌ料理」とは何か、アイヌ民族文化財団「海の幸の料理 白糠地方」p.16〜17 - アザラシ・トドアザラシ・トド
- 使う部分
- 脂
- 下ごしらえ
- 水で長く炊いて浮いた脂をすくう
- 使い方
- 汁に入れる脂の材料
この材料の料理 脂の取り方(魚・陸獣・海獣)(汁の甘みと満腹感のための脂)
出典: 『アイヌのごはん』「アイヌ料理」とは何か
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生で食べる前に 寄生虫の決まり
チタタㇷ゚とルイペは生で食べる料理です。サケやマスにはアニサキスや日本海裂頭条虫がいることがあり、調理で使う程度の塩、酢、しょうゆ、わさびでは死にません。確実な予防は−20℃で24時間以上の冷凍か、70℃以上の加熱です。家庭の冷凍庫は−20℃に届かないことがあるので、生の魚を家で凍らせて作らず、冷凍済みの刺身用を買います。内臓は生で食べません。
本の料理には生食の注意が書かれていないものがあります。このサイトでは、生で食べる品には冷凍の基準を添え、火を通す形(たたきを団子にして汁に落とす)を一緒に載せています。

昆布はだしを取るだけでなく、具として食べました
ほとんどの汁は昆布を水から入れて始まります。アイヌの料理では、昆布をやわらかくなるまで火を通し、取り出して細く切って鍋に戻し、具として食べてしまうのがふつうです。だから火の通りやすい、身の薄い昆布(ホソメコンブ、早煮昆布)を使い、身の厚いだし昆布は使いません。
たたきには火であぶって砕いた昆布を、団子のたれには焼くか素揚げして粉にした昆布を使います。静内と噴火湾の沿岸では、4月末に海岸で拾う穴のあいた昆布オプシプシ(正体はスジメ)を使います。一般にアナメと呼ばれる昆布とは別の種類です。
フノリは白子汁と粥に、乾燥のギンナンソウは味噌仕立ての汁に、色が赤から緑に変わったらすぐ火を止めて使います。
出典: 『アイヌのごはん 自然の恵み』汁物・団子・「アイヌ料理」とは何か p.111